本協議会における今年度新事業として、ICT利活用の推進を図ろうとする会員の事業・研究活動活性化のヒントを得ることを目的として、企業・官公庁・教育機関等が取り組まれている「先進的ICT利活用事例」の視察を行うこととしました。
その1回目として、今回は長崎県を訪れ、以下のような内容で視察を実施いたしました。
平成29年2月1日(水曜日)
ⅠⅡ 長崎県立大学シーボルト校(長崎県西彼杵郡長与町まなび野1-1-1)
Ⅱ 扇精光ソリューションズ株式会社(長崎県長崎市出来大工町36番地)
本協議会会員 10会員(16名)
説明を受ける視察団
[時間]13時00分~14時00分(1時間)
[説明]加藤 雅彦 氏(長崎県立大学情報システム学部情報セキュリティ学科教授)
[場所]長崎県立大学シーボルト校 セキュリティ演習室(仮称)
[説明概要]
H29年4月運用開始予定の『セキュリティ演習室(仮称)』について、
コンセプトや特徴、今後の利活用予定について紹介され、
実際の企業等で採用されているレベルと同等の設備を備えた
サーバールームについても見学・説明いただいた。
◆コンセプト・特徴について
①「リアリティのある演習環境」
・現実のインターネット上で、何が起きているかを学べる
・プライベートクラウドを用いて、学生一人一人に専用のネットワークと
サーバーが用意され、学生が恐れることなくトライ&エラーで
自由に演習可能
・インターネット上で攻撃をしてきたマルウェア等を収集し、
教材として活用可能
・ネットワークトラフィックの可視化が可能
・サーバールームは、企業の基幹システム等で使用する機材を採用。
ガラス張りになっていて、学生は自由に出入りし、
直に見て触れながら学習可能
②「セキュリティに限定しない、汎用性のあるコンピュータ設備」
③「イベントやセミナーにも活用可能な設備構成」
・リソース(CPU・メモリー・ストレージ)に余裕をもたせ、
インターネット接続は上りと下りで別経路にするなど、
多目的に利用可能な設備になっている
・デスクを正三角形にすることで、
講義形態によりレイアウトをフリーに対応可能
・部屋の4面にプロジェクター・スクリーンを配置し、
学生がどの向きに座っても映像を見ることが可能
◆今後の利活用予定(検討中も含む)について
☆SINET5(学術ネット)と接続し、他大学や高専等との共同研究
☆企業との共同研究環境として、製品・サービス開発
☆社会人等を対象とした情報セキュリティのハンズオン演習
☆CTF(コンピュータセキュリティ技術競技)等の各種イベント
[所見]社会に出て即戦力となるIT人材育成がなされる環境が
整備されていると感じた。
セキュリティ演習室について説明される加藤様
サーバールームを説明される加藤様
[時間]14時00分~14時30分
[説明]大庭 茂雄 氏(長崎県総務部情報政策課課長)
[場所]長崎県立大学シーボルト校 セキュリティ演習室(仮称)
[説明概要]
・官民協働クラウド構想の発想の原点
・官民協働クラウド構想の主な特徴
・官民協働クラウド活用構想の具体例
・官民協働クラウドに対するビジョン
以上4点について説明いただいた。
◆官民協働クラウド構想の発想の原点について
平成30年1月より長崎県庁新庁舎が運用開始するに伴い、
高いセキュリティをもつ最新設備のサーバーを県庁だけで使うのは勿体ない
⇒ 地場IT企業にも使ってもらう(「官」の資産を「民」に使ってもらう)
ことで、何かできることがあるのではないか?
◆官民協働クラウド構想の主な特徴について
①県庁・県立大学・地場IT企業のもつ
ビッグデータの共通の格納場所として利用
⇒ 県立大学・地場IT企業が解析・研究・商品化に活かせる
②県立大学・地場IT企業のアイデアを活かせるための
オープンデータを県庁が提供
⇒(地場製造業の生産性向上等の)ビジネスにつながる
アプリ開発のサポートが可能
◆官民協働クラウド活用構想の具体例
①漁海況情報の可視化及びアプリ開発
②バリアフリーストリートビュー
③地場IT企業と県内製造業の振興
[所見]県(自治体)のもつ「データ」「信頼性」を活かし、クラウドという
作業・格納する「場」を設けることで、地場IT産業・地元企業・
教育機関が協働で地元を振興させることに繋げる可能性が開ける
という新しい考え方が得られた。
官民協働クラウドについて説明される大庭様
[時間]15時00分~16時00分
[説明]山口 文春 氏(扇精光ソリューションズ株式会社システム開発部次長)
[場所]扇精光ソリューションズ株式会社システム開発部運用支援課内
[説明概要]
・扇精光とは?
・「長崎くんちナビ」について
・応用事例について
以上3点について説明いただいた。
◆扇精光とは?について
昭和30年設立当初は、
「IT関連事業部(測量の精密機械開発・販売・保守)」
と「建設コンサルタント事業部(測量・設計・調査など現場技術)」
の2つの事業部でスタート
→ 測量システムのIT化が進むにつれて、途中で2つの事業を融合した
「空間情報開発室」が設立
→ 平成26年、扇精光グループとして3つに分社化し、システム開発系が
扇精光ソリューションズ㈱となる
◆「長崎くんちナビ」について
①サービス提供の背景
期間中、どこを移動しているのか分からない演し物の位置情報を
提供できないか?
→ 登場したてのGPS機能付き携帯電話を活用し、趣味の延長で開発を行い、
2002年にサービス開始(3日間のアクセスは約50,000件)
→ その後、地デジのデータ放送に対応させたり、スマホアプリを
開発したりするなど改良を重ね、2016年には3日間のアクセスは
約2,300,000件までになる
②サービスの仕組み
アルバイトがスマホを持って演し物に随行し、アプリが位置情報を
自動送信することで、GoogleMapをベースとした地図に演し物の
位置情報が表示されるようになっている。
◆応用事例について
スマートデバイスのGPSや加速度センサー機能を活用した
応用事例をいくつか紹介された。
[所見]GPSを活用したサービスは様々な可能性が考えられることが分かった。
しかし一方で、「費用対効果」という面でビジネスモデルまで
もっていくことはなかなか難しいということも分かった。
「長崎くんちナビ」について説明される山口様
(C)SAGA Advanced Information Promotion Council.